"星良は、俺の全て…"


そう答える事が出来たら、どんなに楽だろう。


「まさか仁の好きな人が、あの子だったなんて…
私はてっきり、理子だと思ってた」

「理子?」

「…キス…してたでしょ?」


キス?
まさか、あの時の事か?


「見てた…のか?」


コクリと頷き、寂しそうな顔をする星良を見て、思わず本心を言いそうになり、慌てて言葉を呑み込む。


「そうやって、私の知らない所で遊んでたんだ。
私も、遊びの女の一人だった…そうなんでしょ?」


違う!!違う!!


心の中で叫びながら、俺は残酷な言葉を星良に浴びせる。


「まぁ、そんなとこだ…」

「だよね。仁の好みのタイプは、ちっちゃくて可愛い子だもんね。
私とは正反対…
あの同棲してる子が本命だったってワケだ…」


一瞬、星良の言ってる意味が分からなかった。


「ちっちゃくて…可愛い子?」

「隠さなくていいよ。
仁、自分でそう言ってたじゃない。
そんな人が好きなら、無理して私と付き合うことなかったのに…」


あっ…。そう言えば…新井とそんな話ししたよな…


新井が俺と星良の仲を疑ってたみたいな事を言ったから、誤魔化す為にワザと星良とは違う好みのタイプを言ったんだが…


あの時、オフィスには新井しか居なかったはず


「新井に…聞いたのか?」

「うぅん。私、あの時、デザイン室に居たの…」


そうだったのか…


「仁、私と成宮さんが付き合ってるって新井君に聞いても、全然、動じなかったよね?
それどころか、嬉しそうに笑ってた。

アレが、仁の本心なの?
厄介払い出来てホッとした?」


語気を荒げ、俺を凝視する星良の大きな瞳には、涙が溢れていた…