自分の耳を疑った…


「私を…外す?」


一瞬、訳が分からず仁を呆然と見つめていると、成宮さんが仁に詰め寄り胸ぐらを掴み怒鳴り出す。


「何言ってんだ?アンタ、本気で言ってんのか?」

「本気だ。島津には責任を取ってもらって、企画から外れてもらう。
役職も課長に降格だ」

「なんだと?」


成宮さんが怒りに震え腕を振り上げた。
でも私はショックで動くことが出来ず
止めに入ることすら出来ない。


代わりに成宮さんの腕を掴んだのは、明日香さんだった。


「ダメよ!!成宮部長補佐!!」

「放せ!!コイツを一発殴らないと気が済まねぇ」


3人のもみ合を止めようと、社員達が入り乱れ騒然となるオフィス


仁から引き離された成宮さんが尚も怒鳴るが、仁は表情一つ変えず、歪んだネクタイを直しながら淡々と言う。


「今日から、この企画の責任者は西課長だ。
頼んだぞ。西課長」

「はぁ?私?冗談はやめてよ!!」

「冗談なんかじゃない。君が仕切るんだ」


すると明日香さんは大きく首を振り「私より役職が上の人が居るでしょ?」と、仁に目配せした。


その視線の先に居たのは、成宮さん…


「彼は部長補佐。順番からいったら、次の責任者は彼でしょ?
私はそんなの受ける気ないから、彼にやってもらって」

「バカな事を言うな。成宮部長補佐はまだここに来て日が浅い…
それに、彼はデザイナーだ。
他の仕事なんて出来るものか」

「あら?そんなのやってみないと分からないんじゃない?
ねぇ?成宮部長補佐?」


明日香さんが成宮さんに向かって小さく頷くと、成宮さんもそれに応え頷く。


「俺が…やる」


成宮さん…