メルヘン侍、時雨れて候

「おまえ、何しに来た?」

ご隠居の放った言葉は、あたりを光らせた。

最後は長い経験だとか熟練の技術ではない。理屈を超越するような魂の重み。


「な、なんだ、なにをしたじじい。いやだ。もっと黒い事とか自分語りとかがしたい、やめろ!」

黒い悪魔は形を保てなくなってきている。あとはメルヘンさんの気持ちの強さ。

「これで終わったと思うな」という捨てゼリフを残し、

黒い悪魔は、ぐぼうとメルヘン侍のくちの中へと入っていき消えた。

へなへなと犬を抱いたまま座り込むご隠居はため息をついた。メルヘンさんはキョロキョロと不思議そうにあたりを見渡す。


「へ

あれ

あれ?


ああ、あれ? そうだご隠居

いぬ

いぬケガした犬が、そうその子、その子、酷いケガしてるんですよ

ごいんきょー」


この目の前のアホみたいな少年が、さっきまでの黒い悪魔と同一人物には見えない。そんないつものメルヘンさんがそこにいた。