メルヘン侍、時雨れて候

「じっとしてないとダメじゃないか、あぶないから」

畳に伏せたまま、メルヘンさんの言葉は震えていた。

声を出さずに静かに泣いているメルヘンさんの周囲には、黒い煙のような雲が現れ、渦巻き、小さな雷が幾つも発生した。

その黒い煙はメルヘン侍の全身に張り付いて同化しだした。

煙が立ち上るようにして、輪郭のぼやけた人型に見える化け物の様な黒いものは天井ぎりぎりに小さな顔を作り、黄色い目でご隠居を睨んだ。

「デビルモードか……」

犬は背後の異変に気づかず、老人をなお見ている。

ご隠居の表情に厳しさが増した。

赤いクチに見える部分が大きく開き、ご隠居はガードをあげたファイティングポーズを取る。