とぼとぼと、また来た道を引き返すと茶色く、薄汚れた痩せた犬がメルヘンさんの足下にまとわり付いてきた。

「ごめんよ。君の食べるものは何も持ってない」

そう言って犬の目線までしゃがんで、頭をなでた。

尾尻をパタパタと振り、細めた目を輝かせ、上を向いたりしながら、はぁはぁと舌を出している。

このへんでは見かけない顔だ。身体を触るとあちこちに傷があり、出血していた。

「おいおい。なんだよ、穏やかじゃないね」

犬はワンワンと嬉しそうに吠えて、そこら中の窓が、ぱぱぱと明るくなった。

窓を開ける人もいて、その人に頭を下げてメルヘンさんは犬に「しー」夜だからねと囁き、犬を抱きかかえた。

抱きかかえたまま、また来た道を早足で引き返すのだった。