年寄りのにっこりとした顔というのは不気味だ。

そもそも、上戸彩ちゃんを除くたいていの人の笑顔というものは不気味だ。

筆者も鏡の前で素敵な笑顔の練習をしたことがあるが、30秒も経たないうちにゲシュタルト崩壊をおこし、自分が誰だかわからなくなるぐらい気持ちの悪い他人の顔に見えてくる。笑顔の練習は長くても10秒までである。約束して欲しい。帰ってこれなくなる前に。


「ご隠居! いつからそこに?」

『えー、メルヘンさんとズッと一緒だよ……』

「いや、そうじゃなくて、あのご隠居。いつから?」

『ずっと前からだよ……』

「ええ?」

『ズッ友だよ☆』

「う、うん。

ごいんきょ。なに? それって今江戸で流行ってんの? あっし外にあんまり出ないから・・・」

メルヘンさんはいよいよ御高齢、恒例の病にご隠居がかかったのかと。アレはご隠居のように頑固な人ほどかかると言うし・・・と心配になった。

しかし。


しかしだ。

ご隠居の財産で自分の余生をまっとうしてみる。なんてのはどうだろうか?

世間からは“偉いですね♪” なんてチヤホヤされるという

ポエムや童話で生計をたてるしがないメルヘン侍から、身寄りのないお年寄りを甲斐甲斐しく介護する青年への華麗なるジョブチェンジ。

社会的ステータスがいったい何ランクUPするのだろうか。

なんていう邪悪で人間の屑のような今後の自身のライフプランが大幅に書き換えられていく様に、わくわくとしておると・・・

『メルヘンさん。もう昼すぎなんだけどさ、10時に待ち合わせしてましたよね?』なんてまじめな顔でご隠居は言う。

10時? ああ、忘れていた。集金だ。僕の唯一の仕事である月に一回ある未払い住人の集金。10時なんて言わなきゃ良かった。別に昼からでも出来るし。(くそう。全然まともじゃないか)

「すいません」

と、形だけあやまるメルヘンさんであった。


♪メメ メルヘン メメメ メルヘン この世はなんとかパラダイス♪