In the warm rain【Brack☆Jack3】

「ね、ね、食べてみて?」

「…~っ…!」


 レンの頭の中で、様々なシュミレーションが、最新型のコンピューター並みの高速回転で繰り返される。

 食べた場合、食べなかった場合や無視した場合。

 だがそれのどこをとっても、答えは一つしか導きだされてこなかった。


「んがぁっ!?」


 数分後には。

 見事に平手打ちをくらって、がたんと倒れるレン。


「ま、まぁまぁミサト。今度はもっとうまく作りゃいいじゃねェか、な?」


 興奮するミサトを、エイジがなだめて。

 レンは、ようやく起き上がる。


「卵焼きも作ったことねェのかよ?」

「かに玉よ!」

「…似たようなモンだろ」

「あたしが教わったのはね、銃の扱い方と撃ち方だけよ!」


 ミサトはそう言って、奥にある自分の部屋にずかずかと入っていく。


「レディの気持ち、もっと考えたほうがいいんじゃねェ のか?」


 多少はレンに同情しつつも、エイジはカウンターに寄り掛かりタバコの煙を吐き出した。


「…わからねェよ」


 レンはそう言って、座り直すと残ったかに玉を食べ始めた。