あれから1ヶ月が過ぎた。

 ユイの船に救助されてからすぐに、ダイバー達がエイジとレンを捜索したのだが、夜ということもあり、二人を見付け出すことは出来なかった。

 それから1週間その場に留まったが、とうとう二人を発見することは出来なかった。

 あれだけ大きな船が沈没する時に巻き起こす水流は、物凄いパワーで傷ついたエイジとレンゾを海の奥深くに引きずり込んだに違いない。

 だが、未だにあの二人がいなくなった事が信じられなかった。

 あまりに唐突すぎる別れ。

 一言も、言葉を交わさずに――。


「大丈夫?」


 あれからユイは、度々こんな風に聞いてくる。

 だがいつも、ミサトの答えはYESだった。

 ユイは一緒に住むことを提案したのだが、ミサトはそれを断った。


「だってここ…みんなの“匂い”があるんだもん」


 ミサトはそう言って笑う。

 その淋しそうな笑顔を見ると、ユイは何も言えなくなるのだ。


「ユイ!」


 ミサトは明るい口調で言った。

 なぁに、とユイは答える。


「かに玉、食べる?」


 フライパンと卵を持って。


「えぇ、頂くわ」


 ユイはそう言って、笑顔を作る――。



















《In the warm rain》 end