「命を懸ける場所を…間違ったな…」


 かつては、自分もそうだった。

 だから、分かる。

 その先に見えるのは、何もないということが。

 自分は早くそれに気が付いただけだ。

 だが、それは。


「アイツに出会ったから、だな…」


 ミサトに出会わなければ、こんな風に考えを変えることはなかったかも知れない。

 未だに、戦いに明け暮れていたに違いない。

 そのミサトは、皆が笑って暮らせる未来を夢見ていた。


「テメェも、知ったら驚くぜ?」


 エイジは、タバコをくわえたままクックッと喉で笑う。

 ミサトがそんな考えを持つようになったのは、この組織の前のボス、ハクに個人的に出会ったからだ。

 ミサトはいつも、泣いていた。

 だが、ハクに出会って からは、少しづつ笑いたいと思うようになった。


「テメェらの前のボスは…笑顔が何よりも好きだった、ってな」


 その言葉を聞いて、戦闘員は驚愕に目を見開く。

 エイジは無防備に戦闘員に背中を向けたまま、ゆっくりと歩き出した。

 だが、戦闘員はもう、引き金を引く事はなかった。