In the warm rain【Brack☆Jack3】

 相手が倒れる瞬間、レンは身体を一緒に沈ませた。

 そうしなければ、脇腹に突き刺さった短刀はそのまま腹を切り裂き、致命傷になりかねなかった。


(コイツ…!)


 息絶えた相手を突き放す。

 明らかに、この男は自分を道連れに死ぬ気だった。

 事切れる瞬間まで、こっちに致命傷を与えようと短刀を持つ手に力を込めていた。


「何でだよ」


 立ち上がり、短刀を抜く。

 押し留められていた血が、 一気に吹き出した。

 どうして、こんなクソ組織の為にそうまでして命を張るのか。

 それだけの剣の腕前を持っておきながら、この組織の為に命を投げ出して。


「…その先に…見えるのは、何なんだよ…」


 見誤っているのは、オマエだ。

 俺には、俺の意志がある。

 誰にも束縛されることのない、自分の意志が。


「…解放だ」


 レンはそう言って、相手の亡骸に目を伏せた。

 そして、エイジが入って行った船内に向かって移動する。

 と、その時、鈍い爆発音とともに船が揺れた。

 レンは眉根を寄せる。


「………」


 少し考えて、レンは進む方向を変えた。