「…あたし…」


 エイジとレン、そしてユイはミサトの次の言葉に耳を傾ける。

 ミサトは顔を上げないまま。


「どこか遠くへ…行きたい」


 いつものミサトらしからぬ、か細い、弱々しい声音だった。

 シャンの犠牲のもとに、命からがら港から逃げてきてからこっち、ミサトは自分で歩くこともままならないくらいだった。

 一体どれだけの精神的なダメージだったのか、他の三人には本当のところは分からなかった。

 もともと、無くすものは少ない。

 だからこそ、数少ない“大事なもの”を無くしたショックは大きいのだ。

 エイジもレンも、そういうミサトの心情は痛いほどわかっていた。

 だから、かける言葉が見つからなかった。


「誰もいない場所なんてないわ」


 ユイは、ノートパソコンの蓋をパタンと閉じて、ミサトの方を振り返った。