焼き鳥屋の前に立つと、エイジは両手をポケットの中に入れたまま、入り口の貼り紙を見つめた。


『貸店舗』


 そう書いてある。

 これも予想していなかったことではないが、こうもあっさりと手がかりが無くなると、かえって拍子抜けしてしまう。

 それでもエイジは裏口へ回り、玄関の鍵を開けて中へと入った。


「まるで泥棒だぜ」


 呟きながら、エイジは店とつながっている住居の中を見渡した。

 廊下にもホコリがたまっていて、とても靴を脱ぐ気にはなれない。

 前に来たときの記憶を頼りに、地下室へ続く壁を調べたが、そこだけきれいに壁が塗り直されていて入ることはできなかった。

 それとなく他の場所を調べたが、手がかりになるようなものは全くない。