「あたしはお姉ちゃん。
どう頑張っても母親にはなれない。
……だから、あの子の寂しさは埋めてあげられない」


七海が静かにポツリと呟いた。


……七海だって同じなはずなのに。

お父さんとお母さんと一緒に過ごしたいはずなのに。


一人で家事頑張って。

弟の面倒をみて。


一生懸命頑張ってる……。

七海は頑張ってる。


まだそんなによく知らないけど……でも、分かる。


七海がどれだけ家族を大切に思ってるか。


「……でも、海里が言ってたよ」

「え……?」

「お姉ちゃんはママだって。
いつも洗濯や料理や掃除をしてくれるママだって」


海里はちゃんと分かってる。

七海がどれだけ頑張ってるか。

……お姉ちゃんのことをよく見てる。


「お姉ちゃんが大好きだって。
……そう言ってたよ」

「海里が………」


俺はソファから立ち上がると、七海の前に立った。


「……だからさ。
あんまり一人で抱え込むなよ」

「ハル君……」

「何かあったら俺が聞くから。
全然頼りにはならないかもしれないけど……少しは支えになれるかもしれない」


ほっとけないんだ。

そんな顔をしてる七海を……。

俺は……七海の笑顔が一番好きだから。


「……ありがとう」


七海は小さく微笑んだ。