「陽斗はさー、もうちょっと強く言った方がいいと思うな」


ラーメンを啜りながらタケが言う。

会社の近くのラーメン屋は結構うまい。

ちなみに俺のオススメは味噌ラーメン。


「その優しさが陽斗の良いところでもあるけどさ。
一回ビシッと言わないと、いつまでも付きまとわれんぞ?」

「ビシッと……ねぇ」

「香田ちゃん、お前のこと彼氏だと思ってんぞ?」

「いやいや、それはないだろ」

「あーるーの!
この前、他の課の女の子から聞かれたんだからな。
陽斗と香田ちゃんが付き合ってるって本当かって」

「ただの噂だろ。
気にしてたらキリがない」

「その噂を香田ちゃん本人が流してるとしたら?」


俺は麺を掴んでいた箸を止めた。

タケはスズーッと勢いよく麺を啜る。


「……マジで?」

「マジマジ。
香田ちゃん本人から聞いたんだと。
ウチの先輩達は、陽斗が言い寄られてるってちゃんと知ってるけどさ。
他の人から見たらそうは見えないかもしれないし。
まして、香田ちゃん本人からそう言われたら信じるっしょ」


レンゲでスープをすくって美味しそうに飲むタケ。


「……それで?
タケは何て答えたんだ?」

「香田ちゃんは全然陽斗のタイプじゃないから大丈夫って言っといた」


まぁ……タイプじゃないけど。

何が大丈夫なのかさっぱり分からない……。