「……いたんだよ。
あそこに……七海が」
「七海って……え!?伊沢!?
どこにいたの!?」
「普通に座ってたけど。
座敷に案内されるときに見なかった?」
「俺、あの時先輩に絡まれながら歩いてたからな~……。
全然周り見てなかった」
残念、と言うタケ。
「つーか、伊沢と会ったんなら何でそんなに暗いのさ」
「……まぁ、それはいろいろと」
「ふーん。
でも、あんまり悩みすぎんなよ」
「……ありがとな、タケ」
……さて。
昼飯でも食べに行こうかな……。
「陽斗ー!
ご飯食べに行こ!」
香田が後ろから抱きついてきた。
相変わらずスキンシップが激しい。
「こらこら。
陽斗にすぐくっつかないの」
「えー、なっちゃんヤキモチ?」
「んなわけあるか!」
はぁー、とため息をつくタケ。
「ごめん、タケと食べるから」
「え?じゃあ、あたしも……」
「男だけの秘密の話し合いがあるから。
タケ、行くぞ」
「あぁ……うん」
俺は財布を持ってタケと一緒に会社を出た。

