「……ハル君、知ってるんだ……。
あたしが日本にいること……」
何だ………。
「……みんな待ってる。
伊沢が戻ってくるのを……」
「……ごめん」
うつむいたあたしに、風見君が小さく息を吐いた。
「……陽斗か」
「……ハル君、今どうしてる……?」
「さぁな」
さぁなって……。
「自分で確かめろよ。
俺が連絡先教えてやるから」
「………いい」
せっかくだけど……。
……今はいい。
「……伊沢」
「……ごめんね。
でも……いいや」
……連絡を取る勇気がないの。
すると、風見君は小さくため息をつきながら何かを取り出した。
「じゃあ……これ」
「これ……名刺?」
「そこに俺の連絡先書いてあるから。
気持ちが変わったら連絡して。
……ここで伊沢と会ったことは誰にも言わないでおいてやるから」
……あたしは名刺を受け取って、思わず微笑んだ。
「……風見君は変わらないね。
高校の時から面倒見がよくて……」
「俺の周りには手がかかるヤツが多いんだよ」
すると、風見君はクルッと向きを変えて社長の方を見た。
「では、社長。
今日はこれで失礼します」
……ありがとう。
そんな風見君に心の中でお礼を言った。