「七海が帰ってきてからでもいいし……あたしの心の整理がついてからでもいいって……」

「……そっか」


イツが大人になってる。

香織ちゃん、香織ちゃんって騒がしかった……あのイツが。


みんな……少しずつ変わっていく。


「ハルちゃんは、七海のこと……まだ好き?」

「……好きだよ」

「……よかった」


松山はにっこりと微笑んだ。


「でも、無理はしないでね。
あたし、七海にも幸せになってもらいたいけど……ハルちゃんにも幸せなってほしいの」

「…………………」

「ハルちゃんが七海を選んでも……七海以外の人を選んだとしても……ハルちゃんが幸せなら、あたしは応援するよ」

「……ありがとう、松山」


……イツ。

お前は本当にいい人を嫁に貰ったな。


「香織!」

「あれ……樹?」


ふと向こうの方を見ると、スーツ姿のイツが大きく手を振っていた。

そのままこっちに走ってくる……。


「香織、今帰り!?」

「うん。
ちょうどハルちゃんと会ってね、お話ししてたの」

「ハル!?」


驚いたようにこっちを見るイツ。

……俺の存在に気づいてなかったのかよ。


「おほ!
ハルのスーツって新鮮!」

「いやいや……そのセリフ、そっくりそのままお前に返すよ」


でへへ、と笑うイツ。

高校の時よりも笑顔が輝いてる気がする。