「じゃ、じゃあ……」
「ん?」
「あたしは?」
「え?」
「もしあたしにあだ名つけるとしたら何になる?」
伊沢にあだ名……?
そうだな……。
七海だろ?
普通に考えていったら……
ナナちゃんとかナナとか……
……でも。
「俺は普通にそのままでいいと思うけど」
「そのままって?」
「七海」
俺がそう言った瞬間、伊沢の顔が急に赤くなった。
……ん?
どうしたんだろ。
「……そ、それじゃつまんないよ」
「だって普通に考えたらありきたりなのになっちゃうじゃん。
だったらそのままがよくない?」
俺、そういうセンスないし。
「……ハル君ずるい」
「え!?何が!?」
「いろいろ!
……だからモテるんだよ」
「伊沢?」
俺が声をかけると、伊沢は真っ赤な顔を上げた。
「……“そのまま”なんじゃないの?」
そのまま?
……あぁ。
「七海」
「……やっぱずるい」
「だから何で!?」
でも、俺達の距離が縮まった瞬間であった。

