「……でも、ちょっと嫉妬はするみたい」

「嫉妬されなくなったらちょっと困るかも」

「ハル君が愛情のいっぱい詰まったあのチョコ達を食べるかと思うと……んー……複雑」

「じゃあ食べないでおこうか?」

「それはダメ!
女の子達が可哀想!」


ほら、そう言うと思った。


……そういうところも含めて、全部好きなんだよ。


「……はい、ハル君」

「貰えないかと思ってた」

「まさか。
……ただ、いつ渡そうか迷ってて……」


今日はイツが心配でずっと侑哉と一緒にイツのそばにいたからな。

だからいいタイミングがなかったのかもしれない。


「開けていい?」

「いいけど……そんなに上手じゃないから……」


ラッピングをほどいて中身を取り出す。

中から顔を出したのは綺麗に並んだトリュフ達。


そこから一つ取って口に運ぶ。


「……ん。美味しい」

「本当?よかった……」

「ありがとう、七海」


ちょっと照れくさそうに笑う七海を引き寄せて、キスをした。


「ハル君……甘い」

「七海の愛情の味だな」

「じゃあ、来年はもっと甘くなるね」

「ははっ!だといいんだけど」


……その時、俺の頬に何か冷たいものが当たった。

手で触ってみると……水だった。


「雨……?」

「……違う………雪だ。
ハル君、雪!」


目を輝かせてはしゃぐ七海。

なんか……海里みたいだな。


「ホワイトクリスマスならぬホワイトバレンタインだね」

「何それ」


二人で目を合わせて笑った。


来年はもっと甘くなるはずのチョコを期待してた。

……だけど、この時の俺達はまだ知らなかった。

来年なんてないって……

あと数ヶ月もしない内に……二人の運命を大きく動かす出来事が起こるなんて……


この時の俺達は知る由もなかった――