「じゃ、じゃあ……!」

「でも……ごめんね」


俺達は全員目を見開いた。

おいおい……マジですか……。


「そっ……そうだよね。
やっぱり俺より中崎の方が……」


イツ……。

イツの表情が痛々しい………。


「え?中崎君?何で?」


………はい?


「え……だって告白されたんじゃ……」

「あれ、断ったんだ」

「あ……え?ほ、本当?」


香織と篠山を見ると、二人とも知らなかったようで目をパチクリさせていた。


「うん。
嬉しかったけど……やっぱり、中崎君は友達としてしか見れないなって……」

「じゃあ……」

「大崎君はいい人だと思うよ。
でも……あたし、大崎君のことよく知らないの」


……そうだよな。

一方的にイツが知ってるだけだもんな……。


すると、松山はイツに向かって微笑んだ。


「だから……大崎君のこと、いっぱい教えてくれる?」

「え………?」

「まずは……お友達からってことで」

「そ……それって……見込みあるってこと?」


イツが聞くと、松山は笑顔で頷いた。


「っ………よっしゃあ!!」


大きなガッツポーズを作り、喜ぶイツ。


そんなイツに松山はあるものを差し出した。


「じゃあ、友達記念ってことで。
よかったらどうぞ」

「これって……」

「義理チョコ、だけどね」


松山から差し出されたチョコを受け取って嬉しそうに抱きしめるイツ。


「来年は本命になるように頑張ります!」


そう大声で宣言したイツ。

そんなイツを見て、松山は一瞬きょとんとしながらもすぐに笑顔になった。



「うん。あたしも頑張るね。
……イッちゃん」

「……え、香織ちゃん……今……」

「だって友達だもん。
ね?イッちゃん」


……そこまで聞いて、俺達は教室から離れた。


さすがにこれ以上聞くのはやめよう。


みんながそう思い、静かに廊下を歩いて教室から離れていった――