「ゆ…ゆきちゃん…む…虫…!」
半泣きになりながら
由紀ちゃんに助けを求めると、
由紀ちゃんはなにも言わずに追い払ってくれる。
それでも泣き止まない私に
いつも由紀ちゃんは困っていた。
そんなある日、いつものように
虫を見つけ泣き止まない私に
由紀ちゃんは手を差し出した
グーで包まれた手には明らかに何かが
入っている。
「な……に?」
訪ねながら手を伸ばす
「あげる」
そう呟くとグーで包まれた手を開けた
そこにあったのは、
ハートに見える形の石。
「ゆずちゃん、僕と約束しよう?」
「や…やくそく?」
小さな声でハートの石を見つめながら
聞いた。
「ぼくがゆずちゃんのこと
守ってあげる。ずっと一緒にいよう?」
私は嬉しかった
小さいながらもこの記憶だけは
鮮明に覚えてる。
もちろん、
大きくうなずいたことも。
由紀ちゃんがくれた、小さな贈り物
ハートの石はいまでも私の机のなかに大切に
しまわれてある。

