「お目覚めの時間でございますよ、千景お嬢様」

私の世話係だった執事の前川が亡くなって早半年。

この半年間の朝は必ずこの一言で起こされた。

「んぅーぁ」

「お嬢様、おはようございます」

ベッドの脇で羽織りを持ち、立っているイケメン。

黒の傷みを知らない髪に、切れ長の瞳、高すぎず、低すぎずの鼻。

とにかく、全てが整った完璧男、満井茅。

私の執事だ。

「本日はいつもより冷え込みますので、上着をお忘れにならないようお願いしますね」

私はこいつが気に食わない。