あいつサイド
朝早い時間。
眠い目を擦って家を出た。
隣の家に住む、巴はいつもこの時間に家を出ていたはずだった。
朝も放課後も休みの日も練習があるとぼやいていた巴は、それでもいつも輝いて見えた。
音楽が大好きな、あいつ。
軽音部に入って周りから姫なんて呼ばれて。
歌を歌ってるあいつ。
俺の好きな、あいつ。
田中にはいつも、相談してばかりだった。
昨日だって、練習の後相談に乗ってもらっていたんだ。
「大丈夫!巴ちゃんはきっと、絵谷君の事好きだよ!」
根拠の無い言葉に、浮かれていた。
だから。
「予行練習!」
そういったあいつの顔と声が、頭から離れない。