『おはよう。』
母親が皿をテーブルに並べながら言った。
その横には新聞を拡げた父親とパンを頬張る妹。
『お兄ちゃんトイレ長いよ。』
妹が席を立ちながら言った。
余計なお世話だ。
男はテーブルに並べられたパンとコーヒーに手を付ける。
洗っていない手がやけに汚く感じた。
さっさと朝食を済ませ制服に着替える。
今日から中学3年生だ。
さすがに始業式に遅れるわけにはいかない。
慌ただしく家を出た。
『剛、行ってらっしゃい。』
母親が玄関まで見送る。
最近では母親のこういう子ども扱いが嫌になってきた。
剛は何も言わず無愛想に家を後にした。

