眠りについてから数秒後、はっと気付き辺りを見渡すと、そこはベッドの上ではなかった。しかし見覚えのある光景ではあった。


「あれっ?ここ……何で駅の前のデパートの入り口にいるんだろう?」


沙耶は小首を傾げながら店の中に入っていった。
店ではバーゲンセールが始まっていたらしく、いつもよりお客の数が多い。


「ここバーゲン始まってたんだ。明日にでも来て買わなきゃ!」


呑気な事をいいながら店を周り始めた。


「あっそうだ、今って何時なんだろう…」


自分の携帯で時間を確認すると何か違和感を感じた。


「今は10時半、さっき寝た時間が確か9時50分くらいだったよね?……あれ?」


なぜか計算が合わない事に沙耶はまたしても小首を傾げた。
なぜなら沙耶の家から駅までは約20分くらいかかる。走れば勿論もう少し早く着くが、さっき夢の中にきたときに呼吸が乱れていなかったのでそれはない。加えて、沙耶は寝る前はまだ今の格好ではなかったし、更に寝起きですぐに出掛けるなんて到底考えられない。そして最も重要なのは、はたして自分が何時に夢から覚めたのかという事である。