必死に走った甲斐があり無事電車に間に合った。沙耶は大きく肩で呼吸をし微かに滲み出た汗をぬぐい取ると、電車の扉にもたれかかり、ゆるりと電車に運ばれていった。








だだだだだだ


廊下を走る音が反響してビル内に響き渡る。


「おはようございます!!」


ギリギリ間に合った。
沙耶は安堵し胸をなで下ろした。


「おはよう。ギリギリセーフね。」


話しかけてきたのは同期の中原。


「おっおはよ。もー朝からどうなるかと思ったよ〜。」


他愛のない会話をしながら中原の隣の自分の定位置についた。


「どうしたの?沙耶にしては珍しいじゃない。」

「うん。多分昨日寝るの遅かったから……」


確かに、少し眠そうな目をしているなと中原は感じた。


「昨日寝るの遅かったってもしかして今日の企画書作成してたせいとか?」

「そうなんだよ。でも任せて!今日の考案会は昨日まとめ上げたこの資料でバッチリだから!!」


そう言って沙耶は鞄の中を探った。
しかし次の瞬間沙耶の顔から血の気が失われた。

「あれ……う、嘘でしょ……」


沙耶の動きが止まった。

「…―っ、ない!!!」