「そんなに酷いの? 美里ちゃんのブラコン……」
「酷いなんてもんじゃない」
 付き合ってから約三ヶ月、私は里志くんの家にお邪魔したことがない。里志くんのおばあちゃんがたこ焼き屋さんを営んでいることは付き合う前から知っていたし、たこ焼きを食べるだけにしても是非行ってみたいと、前々から思っていた。
 しかし、どうしても行けない理由があったのだ。
 その理由とは———里志くんの双子の妹、美里ちゃんにある。

 彼女は極度のブラザーコンプレックスで、高校生になった今もずっと、里志くんのことを強く想っているのだという。
 大きくなるにつれて他の男を好きになるだろう、自分に対する想いなんて消えていくだろう。里志くんはそう考えていたけど、その考えは大間違いだった。
 幼稚園、小、中学校までずっと一緒だったのに対し、高校で急に離ればなれになってしまったのが引き金となって、彼女のブラコンはよりいっそう酷くなったそうだ。
 学校に行っている間は一緒にいられない分、家ではそれはもうべったりらしい。