お兄ちゃんに彼女ができた。

「いつから?」
「え」
 ぎろりと睨まれて、私はたじろいだ。
「いつから付き合ってんのって聞いてんの!」
「三ヶ月前」
 代わりに里志くんが答えて、美里ちゃんが私を睨む目を更に鋭くさせる。大きな目だな、と思った。
「三ヶ月!? そんな前から……なんで言ってくれなかったの!」
「だって美里うるさいし」
 がんっ、と美里ちゃんがショックを受けて飛び跳ねた。里志くん、言い過ぎじゃ……。
「何よ……もう、お兄ちゃんなんか知らないっ!」
 美里ちゃんは叩き付ける様にそう言うと、どすどすと店の奥に消えていった。ふう、と里志くんが汗を拭う。
「ごめんな、ありさ。……言った通りだっただろ?」
「う、ううん。美里ちゃん、大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫。あいつ、見たまんま図太いから。ほら、冷めるぞ」
 里志くんに促されて、私はたこ焼きを口に入れた。熱々で柔らかくて、中のたこは大きくて歯ごたえがよくて、なるほど、これは確かに天下一品だと思った。
 けれど、たこ焼きを食べてるときも、食べ終わってから里志くんと他愛ない世間話をしてるときも、ずっと、美里ちゃんのしかめっ面が頭から離れなかった。