お兄ちゃんに彼女ができた。

「こんにちは。お友達ですか？」
　彼女は可愛らしい笑みを浮かべて、私に尋ねてきた。可愛らしいのは可愛らしいが、口元は引きつっていて、目は決して笑っていない。
「えーっと、」
　私が正直に答えていいか迷っていると、横から「彼女だよ」と里志くんが口を挟んだ。彼女は眉をひそめる。
「え、友達？」
「彼女だって」
　里志くんの、追い打ちをかける様な言い方に、ますます彼女から笑みは消えてゆく。
「だって、ミサ、そんなの聞いてないし」
「言ってねーし。えっと、彼女の松本ありさです」
　ここに来て自己紹介、とでも言わんばかりに、里志くんは私の肩に手を置いてしれっと言った。
「よ、よろしくね」
　私があくまでも当たり障りのないように彼女に話しかけると、
「あ？」
　ついに、彼女は露骨に顔をしかめた。
「で、こっちが俺の妹の、秋山美里ね」
　そんな彼女をさらりと無視して、里志くんは自分の妹を指差した。その失礼な態度から、里志くんと彼女の間にある遠慮なさが伺える。当たり前か、兄妹なんだから。