学校に着き、昇降口の所で私だけ靴を履き替える。いつもはここでお別れして、私は音楽室へ、里志くんは体育館前の男子バスケ部部室へと向かう。
 でも来るのが早過ぎて、いつも開始までの時間にかなり余裕がある。来る前に美里ちゃんに捕まった今日でさえ、まだ部活開始までそれなりに時間はあった。
 私の足は音楽室へは向かず、ただ里志くんと向き合って、そのまま動かずにいた。
 里志くんも動かない。私達はしばらく見つめ合った。

 ひと気のない昇降口。静まり返った空気。
 お互いの呼吸音だけが、やけに大きく聞こえる。