お兄ちゃんに彼女ができた。

 私は、いつのまにか里志くんのことを意識するようになった。
 その朝練の話を聞いてからは、毎朝里志くんが通りかかると挨拶するし、前の日の晩にしたメールの内容を、廊下ですれ違ったときに話したりした。
 そうして顔を合わせる機会や、話す機会は次第に増えていった。

 * * * 

 夏休みを目前にしたある日の放課後のことだった。
 担任に、夏休みの課題となるワークブックが職員室の前の棚に置いてあるから取りに行く様言われ、私は職員室に向かった。
 運悪くその日は委員長の男子が欠席で、私一人でワークを運ぶことになったのだが、そのワークの量が尋常ではなかった。とても私一人では運べそうになかった。
 それでも私は観念して、一階の職員室と四階にある教室を三、四往復する覚悟でいたのだけれど。