行き先階はB1……。

就業時間が過ぎているせいかエレベーターはどの階にも停まらずにいっきに降る。


「課長!!」


『ドン!!』


課長にエレベーターの壁際に押し迫られた。

「黙れ!頼むから今は黙っててくれ…」


切なそうな声と瞳で哀願する課長。


こんな自信のなさそうな課長を初めて見た。

「課……!」


課長の唇が私の唇を塞いでいる。


なんなの………?


今 私にキスをしてるのは池野課長なの?


…………違う。


野生の獣でも魔王でもない…………。



敵に脅えている小動物……。

恐れを抱く子供………