黒羽の裏切り

「・・・・。」






何も言葉が出てこない。





その女性は２０代前半くらいだろうか。


ちょっと疲れたような顔をしていた。



誰かと待ち合わせをしているのだろう。



たまにあたりを見渡しながら携帯をひたすら覗き込んでいる。



そんなことを考えていると、また隣から声がした。



「寿命は分単位や秒単位までは見えない。

そんな余命が一時間切ったような人間の欲望を満たしてやったって無駄だから。」





私が無反応なのにもまったく気をかけないという感じで、淡々と説明を続けるゼロ。





「そんで、あの女の全身から発される赤い光、わかんだろ？」






「あ・・・うん。」





「あれは、欲求の必要度を表している。」



「必要度？」


「そう。欲求を欲していれば欲しているほど、どんどん黒いに近い濃い色になっていき、満たされていればいるほど、どんどん白に近い色になっていく。



まあ、正直言っちゃえば濃い青から黒までの色が発されているとき以外は気にする必要は特にない。


ただ、もし黒味を帯びた色が発されている場合は、ちゃんと欲求をその人間に与えないと、俺らの任務は、失格。」