「ルーペをかけろ。今から説明するから。」
数分間、静かに二人で人ごみを見つめていたのだが、いきなり隣から低い声がした。
「え?ルーペ・・・?あ、うん。」
一瞬困惑したものの、すぐそのルーペがあの不思議なめがねらしき、サングラスらしきものだったことを思い出す。
私が顔にそれをかけたのを、チラッと横目で確認した後、またゼロは視線を下に戻した。
「いいか、それをかけて、人間を見ると、数字と、色がまず見えるはず。」
言われたとおりにルーペをかけたまま下を見ると、確かに行き交うそれぞれの人の頭上にカラフルな数字が浮かんでいる。
それと、人々がそれぞれ違う色で発光していた。
「う・・ん。見えたけど・・・」
「まず、その頭上の数字は、その人間の、余命をあらわしている。
ピンクの数字は、後何年生きられるか。
黄緑の数字は、後何ヶ月生きられるか。
水色の数字は、後何日生きられるか。
そして黄色の数字は、あと何時間生きられるか。
うーん、たとえば・・・ほら、あそこの交番の近くでスーツケースをもって立ってる女いるだろ?」
「あ、うん。」
「彼女の頭上には、(ピンクで)56(黄緑で)4(水色で)15(黄色で)19って書いてある。
すなわち彼女はあと寿命が56年4ヶ月と15日19時間あるってこと。」
