黒羽の裏切り

すると今度はこっちを見向きもせず、ただ遠ざかっていってしまうゼロの、けだるそうな声が聞こえた。






「はあ・・・

まあもういい、どうでも。



お前の好きなようにすれば。



ただ、今言っとくけど、ここは地上170メートル近い空中。




お前は飛び方も、ましてや羽のしまい方もまだろくに知らない。





しかも普段着や鍵や金、その他の貴重品を一切見につけていない中で、もう深夜の12時半を過ぎている。



お前んとこのマンションはカード認証で、しかも今お前の家には誰もいない。



すなわちどんなに息で鍵を開けられる力を持っていたとしても、あの厳重ロックを開けられることはまずないだろ。



頼れる友達だってそんなにいなくせに。



もう12月半ばだぞ?そんな薄着で誰か入れてくれるまで待つってのか?しかもそんなはたから見たらコスプレみたいな格好で。



まあ俺はどうでもいいけどな。


んじゃ、せいぜいがんばれよ。」





・・・・・・・。






え?




待てよ?




地上170メートルって今さっき、あなた言いましたよね?




ん?んんん?