黒羽の裏切り

ん??


んんん?



飛び降り・・・



飛び降りる・・・・?






53階もある東京の高級マンションの屋上から?






飛び・・・降りる?







「え、ちょっと待って、いまなんて…」







その場から一歩も動かずにゼロのほうを見ると、もう本人は羽根を出して、空中に浮いていた。







すると私の質問には答えず、無表情でこっちに飛んでいき、腕を乱暴につかんでくる。





何がおきているのか考える隙もなく、いきなり自分の体がふわっと浮き上がった。






「へ?
いや、ちょっと待って!離して!こわいっ
すんごく怖い!」





冷たい夜風が体中に突き刺さり、乱暴にもたれているせいか、自分の体が風と共に飛ばされてしまいそうな気分だ。




どんどん屋上の地面が遠ざかっていく。





必死に抵抗をしようと、暴れるが、つかまれている腕はびくともしない。






「ん、そんなに離してほしいならどうぞ。」






「・・・・・え?」







すると一気に腕にあった圧力がなくなり、さっきまで上に上がっていたのとは反対に、今度は重力で下に落ちていくのが分かる。








「きゃああああああああああああああ」






もう死ぬ覚悟を決めて目をつぶった。





52階から飛び降りて生きられる可能性なんてゼロに等しい。