その物体はこっちを振り向き、


あたりを見渡しながら、


ビルの間を潜り抜け、



少し急いだようにこっち方面の空へと向かってくる。






あ、やっぱ人間だ。


羽の生えた、人間…






どんどんその羽の生えた人はこっちに近づいてくる。







そして、私の窓の目の前を通り過ぎる際に、







ゆっくりと私のほうを見た。





今まで顔とかは見れなかったけど



その瞬間で目が合い、


顔どころかあっちの表情さえも読み取れた。





全身から蒼光を放ち、


黒い羽は、


角度によって若干色や輝きを変える。

真っ黒の服装に、


逆さクロスのネックレスがキラリ。



彼の髪は襟足がだいぶ長く、アッシュグレーと黒が入り混じったような不思議な色。

顔自体はやせ細っていたが、驚くほど整っていた。





人間のものとは思えないくらいに。







よく見ると腕の中でぐったりしているのも同じく人間で、ほぼ一緒の服装をしている。







しかし、



一番気になったのはその目。


輝きはなく、ただただいつまでも続きそうな深みがある色。








そう、私と同じ、怖いくらいに闇に引きずり込まれそうな、漆黒だ。