「これ、借りたいんだけど。」






ドアのところで固まってしまった私を見ながら、


本を突き出してくる。




「え、あ…うん。」




彼の顔を直視しないようにそそくさと貸出カウンターに向かう。



自分でも驚くくらいの動揺ぶり。





なんか、彼の醸し出すオーラが尋常じゃなく怖い。





あの日に、悪魔たちから感じたとてつもないパワーを勝手に自分の脳が感じ取ってしまっている。






バーコードリーダーに自分の名札のバーコードを読み取らせ、

パソコンにログインする。




見上げなくてもわかる。


目の前にいる彼の、私の一連の動作を見る視線。



「あのー、本、バーコード読むために必要なんだけど。」




準備が終わり、顔を見ないようにしながら彼の方に手を差し出す。




「……。」

無言で本を手に差し出された。





それを受け取って引っ張ろうとするが…




いっこうに動かない。




「…いや、あの、本、離してもらえないかな?」




しかたなく彼の顔を見る。