黒羽の裏切り

よく見ると、



教室内にも廊下にも、彼を一目見ようと噂を聞きつけた

ほかのクラスの女子達が意味もなくたむろしている。







ゲッ…



とおりずら…





ちょっとめんどうだが仕方がない。






とりあえずここにいたらますます騒がしくなる。





そう思いながら、そそくさといつも昼を過ごす図書室へと向かった。







「ふぅー、やっぱここは落ち着くなーっ」





迷わず司書室に入り、ため息をつく。




「え?なになに?なんか一段と疲れた顔してるけど。」





図書室の司書さんの、中村さんが面白そうに聞いてくる。






「あー、いや、クラスに新しい転校生が入ってきてさー、



「あ、それってあのイケメンの?」



話の途中でさえぎられた。





見ると、私と同じく毎日昼時は図書室でくつろぐ、

隣のクラスの南がちょうど入ってきた。





「あーうん、てかやっぱ噂って広まってる?」





「・・・うーん、まあ結構広まってるんじゃん?うちの耳にだって入ってきたくらいだし。」




南はそういいながら興味なさそうに本を取り出し、パンをかじりながらそれを読み始めた。





南はだいぶ地味ーなグループの生徒だ。




いつもめがねをかけ、制服を着崩すこともなく、普段は本を読んでおとなしくしている。





でも、私が唯一、友達とでもいえる存在なのは彼女だ。




彼女も私もよく一人で図書館にいたので自然と話すようになっていた。




まあ、話すっていっても必要以上には雑談しないって感じだけど…





でも正直、人付き合いがあまり好きじゃないわたしにとってはそっちのほうが好都合。