黒羽の裏切り

「ノアちゃんも、この間までは一人の人間として生きてたんだもんね。


分かるよ、
いろいろと刺激が強すぎるよね。



・・・確かに、中には人間としての記憶がほとんどなくなっちゃってて、完璧に人間を見下しちゃってる悪魔も、少なくないと思う。




でも・・・




ちゃんと人間を人間としてとらえて、ちゃんと感情がある生き物だって分かってる悪魔もいっぱいいるんだよ。




私達だって今はサタンの元で忠実に働くただの黒羽団の一員にすぎないかもしれないけど、


欲望を与える人間のことを、ちゃんと考えてないわけじゃない。」




サラちゃんの方を向くと、彼女は自分のコップのほうを見ながら、なんか悲しそうな顔をしていた。





「ゼロは、あんなんだし、パートナーとしてはちょっとぶつかることもあると思う。



でも、あの人も、人間の気持ちが分からないわけじゃないから。


悪魔だって、昔は人間だったわけだし、今だって・・

外見とかは変わっても、中身はまだほとんど人間なんだから。」




「うん・・・・ごめんね、サラちゃん。


分かってる。


サラちゃんやルアみたいに優しい悪魔もいるんだってことくらい。



ただ、ちょっとあまりにいろいろ急で、びっくりしてただけだから。



多分、悪魔として自分がいろいろ慣れるのが怖かっただけだと思う。


人間としての自分を失いそうで・・


ゼロを見てると、怖かったから。」






すると、サラちゃんは悲しそうな目でこっちを振り向いた。


口元は、無理して微笑んでいたけど。