黒羽の裏切り

あ・・・



これがあの、噂の欲望の玉・・





とでもいうやつだろうか?





全然重みはない。



というか手のひらで浮いているからそんなに輝いていなければ存在にも気づかなかったもしれない。




こぶしを作ってみても、その玉は形を変えることなく、すっと私の手を通り過ぎてゆく。






これって・・・





ターゲットが決まったってこと?






もしかして、あの男の人なのかな?







もう一回二人が抱き合っていたところを見てみると、もう二人は仲良く手をつないで歩き出していた。





終電もないはずだけど、これから歩いて帰るつもりなのだろうか?





とりあえず急いで後を追う。







あの男の人の頭上に飛び立った瞬間、変に緊張が襲ってきた。




ごくっと息を呑む。





よし!





初仕事!






覚悟を決め、しっかりと頭に落ちるようにその男の頭上で手を構えた瞬間、



手首をとっさにつかまれ、その場からひきづられてしまった。