そう。
彼は突然、何の前触れもなく、私の前に姿を現したんだ。
「―はい。どうぞ。」
白い病院服
左手の点滴
繋がれた機械
整った顔立ち
少しクセのある黒髪
美少年とはきっとこうゆう人のことを言うんだろう。
どうぞ、と差し出された手には、私のオレンジジュースがあった。
「ありがとう。」
笑顔で受けとる私。
見たところ、私と変わらなそうな年に見えた。
「骨折ですかか??大変ですね。」
彼が言った。
「えと、違うの。これ、ただの捻挫。ちょっと部活でね。
あなたは??入院してるの??」
戸惑いながらも私が答えると、彼はテーブルをゆびさして言った。
「はい。
あの、もし時間があるならあっちに座って少し話していきませんか??
…ヒマなんです。病院って。」
そう言って笑う彼は、なぜだか少し、寂しそうだった。
学校に行っても、どうせ暑くてめんどくさいし、体育も部活もできない。そう考えたら、少しくらい大丈夫かな、という考えが浮かんだ。
「いいよ。少しだけなら。」
