たからもの


~♪
リビングにある時計から9時のチャイムがなり、私はそれと同時に家を出た。

〔制服〕

この後は学校だから。


15分くらい歩くと見えてきた。
総合病院。私の町ではここが一番大きい病院。



診察はすぐに終わった。
もっと長くなるかと思ってたんだけど、わりと空いてたみたい。

「重いねんざ。」

お医者さんにはそう言われた。

それで私は松葉杖生活になることになった。

慣れない道具を使うと、とても疲れる。足1本使えないだけで、こんなに生活が不自由になることを初めて知った。

足って、2本あるのはすごいことなんだな―。

そんなことを考えていた。


そのまま学校に行くのも、なんとなく気が進まず、とりあえず病院の談話室で少し休んでからにしようと思った。

すこし蒸し暑くて、ジュースが飲みたい気分だった。




あの時、なにも考えず、真っ直ぐ学校に行っていたら、あなたに出会うことはきっとなかった。

こんなに悲しい、切ない愛を知ることもなかった。

あなたと会えなくなることが、辛いと、そう思うこともなかった。