「俺で良かったら悩み、聞くよ?」
相談に乗って頼りになる先輩アピールをしておこうという狡い考えは少しある、が、日向が俺にこうして話を聞かせてくれるだけでも進歩だと思う。
今まで口を開けばウザイだの溜息だのばかりだったからね。
そして期待しながら彼女の言葉の続きを待つと、珍しい事に彼女の視線が真っ直ぐに俺を捉えていた。まさかこんな熱のこもった視線を受ける事になるとは。
…キスして良いってことか?
「私にいつもつきまとってくる人が居るんです」
「もしかしてストーカーの被害に遭ってるのか?よし、すぐ警察に―――」
「その人は、どうやら私以外の女子からの人気は高いようですが、何故か執拗に私にまとわりついて来るんです。
歯の浮くようなセリフばかりを言って私をいつも困らせます。特に困っているのは、毎日学校でバラの花を手渡される事です」
「…そんなに嫌?」
「嫌ですよ。私のためにバラの花を買ってくれたのだとしても、その人のお金を使ってまで欲しいものではありません」
そうか。


