「…じゃあ、夏休みは各自各々好きに過ごすって事で良いんですね?」
「!……それはダメ。絶対ダメ。また明日精神鍛え直して出直して来るから待ってて。お邪魔しましたさようなら!」
日向が良いですね?って確認をする時、首を傾げたりこちらに流し目を向けたりするから思わず理性が飛んでいきそうになった。
俺、重症だよ。
だけど、ラブは日向の心の準備が出来るまで待つしかないんだ。
耐えろ、俺。耐えるんだ、俺。
今はちょっとずつラブ度合を積み重ねる時期だから仕方ない。ここで俺が下手を打ってしまったら、せっかくの貯金がパーになってしまう。そんなのはダメだ―――…と頭では分かっているつもりなんだけど。どうしても身体は正直だからね。…本当に困っちゃう。
―――かくして第一回目の彼女の家訪問は、出してくれたお茶を飲むこともなく、わずか20分足らずで退出する事となった。
彼女の家を去る時、「顔が潰れたトマトみたいな顔してますよ」と言われたが気にしない。何で一々“潰れた”トマトだったのかも気にしない。
確かに日向があまりにも魅力的だったから、理性のギリギリだったから、情けない顔をしていたかもしれない。しかし、そんな事はどうでもいい。
滞在時間は20分足らずとか、彼女の淹れたお茶を飲めなかった…のはちょっと悔しいけどどうでもいい。
今日はなんと言っても彼女の部屋にあがらせてもらったのだ。
つまり、部屋に入れてもらえる距離まで縮まった、ということだ。…彼女とイチャつく日はそう遠くないんじゃないかな。


