かくして俺は、仕方なく当たって砕けろ作戦を実行することにした。
しかしながら、俺もそう馬鹿ではない。何度も同じことを繰り返していれば、それは経験値を積む人間とは言えない。
いつもみたく、夏休みにいっぱいデートしようなどと彼女に誘えばどうなるか。
『嫌です』の容赦のない言葉、あるいは良くても『どこの百均ですか』というオチだろう。
だから、ここは先手必勝法として「海へ行こうか」と場所を指定し、提案してみた。
「暑いし、遠いじゃないですか」
やはりそれでも容赦のない言葉をいただいた。
「たまには遠出も良いものじゃない?」
「何にしろ先輩と海は行きたくないです」
「………」
もう、俺の彼女のあしらい方が雑すぎる。だけど、ここで諦めたら本気で俺の夏は終わる。
誰だ、素晴らしい勉学の場に1ヶ月の休暇も与える馬の骨は。
俺は頭をフル回転させ、妥協に妥協を重ね、もう1つの提案をする。
頑張って百均ぐらいなら付き合ってもらえるだろうが、毎回百均と言うのもアレだ。寂しい。だって、彼女ったら、俺のこと無視して、商品ガン見だからね。俺を見てって感じなんだけど。…無生物と張り合う言葉を口にするのは、さすがの俺のプライドが許さないので黙ってるけどね。


