「日ー向ちゃーん、キスしよう」
「………」
まさかの距離を置かれたとある帰り道。今日は珍しくバイトの始まる時間が遅くなったので一緒に帰ることになったのだ。まさに運命。
そして先ほどの発言で距離をそっと置かれ、2人の間隔が開いたのは俺の気のせいだと思いたい。
一応俺にだって理由はあるのだ。
「俺たちって愛し合ってる割にラブ度が足りない気がするんだよねー」
「そもそも愛なんて存在しませんよ」
「本当に日向は可愛いね」
「………」
何故褒めたのにさらに距離が開いてしまったのだろうか?俺には全く理解不能なんだけど。
だって照れ隠しをする彼女を見て可愛いと言うのは普通の反応じゃないの?何でそれを言うとアウトなの?どうして一緒に歩いていた彼女が俺を置いて先へ進んで行くんだ?
「ちょっと待ってよ!」
俺は先ほど振りほどかれた彼女の腕を再び掴んだ。よし、今度は絶対離さないでいよう。
「…何ですか」
「日向ってさ、その…もしかしてだけど俺以外に仲の良い男の子って居るの?」
実を言うと俺のキス発言はこの考えからきたものだった。


