僕がさえの病室から出て、結構な時間がたつ。
なぜ僕が病室に行けなかったかというと、学校が忙しくなったりという理由もあるが、一番は、さえの変なあの言葉を言われてから、自分がよくわからなくなってしまったのだ。
さえは確かに記憶喪失だからしょうがない部分もあるが・・・。
そんな時、どちらかといえば仲がいい葵が話しかけてきた。
「あんた、最近元気ないけど?もしかして、さえが交通事故にあったから?」
「当たり前じゃん。」
「お見舞いに行った?」
「行ったけど・・・。」
「行ったけど・・・何よ」
「別に。」
「もしかして、それからお見舞いに行ってないなんて言わないでしょうね・・・?」
僕はなにも言えなかった。
だって、僕が行くのこわいなんていったら、どれだけ馬鹿にされるか。
そうしたら、葵はこういってきた
「あのさ、行ったらどうよ。さえちゃん、絶対悲しんでるよ?お前がお見舞いにこないから、心配してるんじゃないの?」
正直、これにも返せなかった。だけど、何かは変えそうと思い、こういった。
「さえは、心配していないよ。」
「は?どういうことよ。」
「さえは・・・」
「さえちゃんがどうしたのさ・・・」


「ー記憶喪失になったんだー」


「え・・・?嘘でしょ・・・。」
「本当だ。誰にも言うなよ?」
「分かった・・・。」
沈黙が続いてしまった。

それから一週間後。

記憶は戻っていないが、完全復活した。
しかし、学校にはこなかった。いや、来れなかった。
さえのお母さんと担任の先生で話し合ったそうだ。
僕は、学校にきて記憶を少しずつでも戻したほうがいいと思うんだが。
まあ、心配な気持ちはわかるけどな。

そんなことを思っていた時、また葵がきた。
「ねえ、さえちゃんってさ、声優目指してるんだっけ?」
「そうだよ。今はそんなこと思ってないだろうけど。」
「あのね、私、さえちゃんのお母さんとさえちゃんについて話してたの。その中の話題でね、さえちゃんの夢の話題がでてさ。」
「へぇ、それで何さ。」
「さえちゃんのお母さんね、さえちゃんに声優をまた目指して欲しいらしくて、アニメ見させてるんだって。そうしたら、声優になりたいって言い出したらしいよ!」
僕はびっくりした。また、さえは声優の夢を目指すんだなって。嬉しかった。
「教えてくれてありがとう」
「いえいえ♪」
急いでさえのお母さんに電話をした。
しかし、さえのお母さんは出なかった。
と思っていたらさえが出た。
僕はびっくりしすぎて声が裏返ってしまった。
「もしもし」
「もしもし、さえさんのお母さんいらっしゃいますか?」
「お母さんは仕事中で今いませんが。何か用事があるなら伝えましょうか?」
「い、いえ、また後で電話します・・・」
「わかりました。」
「失礼します」

僕はちょっとでも普通の用な感じで話せてよかった。電話してよかったって思った。

それから、3週間過ぎた頃だった。さえがすごいことになってしまったのだ。