「……ふぅ」 短く息を吐いてから、207号室のドアを二回ほど軽く叩く。 「はいっていいよ」 中から聞こえてきたのはガラガラのおじさんの声。 「……失礼致します」 私は引きつる顔を無理やり笑顔に切り替えて、部屋に入った。 「あぁ、アンちゃん…待ってたよ…」 「仲居のおじさん、ありがとう」 部屋のダブルベッドで腰を掛けていたのは少しハゲかけた頭の小太りのおじさん。 50歳くらいだろうか。 この店の常連だ。