あと一人
そう思っていたのに次のバッターは亜美ちゃんだった
今日の亜美ちゃんは全打席でヒットを打っている
この大事な場面の前に凜がタイムをかけてみんなマウンドにあつまった
この大会で始めてのことだった
「マジごめん」
光が謝ってるけど悪いのは光じゃないし、誰が悪いかなんてない
「別にいいじゃん
光が悪いんじゃないんだから」
「次歩かせる??」
歩かせたくないけど今日の亜美ちゃんを見ればそう思いたくなるかも
「なに言ってんの??
それって逃げてるのと同じじゃん
あたしはちゃんと勝負したい」
光がそう言うなら大丈夫だよね??
「そうだね!!
じゃあ光!!頼んだよ」
みんなそれぞれのポジションに戻っていって試合が再開された
一球目から光はどんどん攻めていって2球で2ストライクと追い込んだ
そして3球勝負に行った3球目だった
光の渾身のボールは亜美ちゃんのバットの芯でとらえられた
あたしは打球を見上げることしかできなかった
打球は左中間を真っ二つ
あたしも急いで中継に入った
すごい勢いであたしの前を晴嵐の選手が走っていった
レフトから受けた中継のボールをホームになげた
『セーフ』
この瞬間あたしの全身の力が抜けていった
そしてなにかがこみ上げてきた
間に合うか間に合わないか紙一重だった

